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DVD付録


PDF版『考える日本史授業1』『考える日本史授業2』授業記録映像付き

  
新しい歴史教育のパラダイムを拓く 
――徹底分析!加藤公明「考える日本史」授業
 
加藤公明実践を研究・追試してきた18名が「考える日本史」授業を徹底分析。授業映像(DVD)に記録された「歴史を熱く語り合う高校生」の歴史意識の形成過程に迫る。PDF版『考える日本史授業1・2』付き                   
編者=加藤公明・和田悠
体裁=A5・288ページ
本体価格=3,000円
発行日=2012年7月20日
ISBN=978-4-88527-207-3
在庫=あり
   
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■目次


序論(和田 悠)

第T部 戦後歴史学・歴史教育と加藤実践

第1章 「戦後歴史教育」の実践について(成田龍一)
  ―加藤公明・授業実践を考えるために―

第2章 「考える日本史」授業の成立(前田徳弘)
  ―宮原実践と加藤実践のあいだ―

第3章 加藤実践に見る「歴史学の成果に学ぶ」ということの意味(北尾悟)

第4章 絵画史料の教材化と加藤実践(柄澤守)

第5章 歴史を叙述する主体をつくる歴史教育(和田悠)   
  ―歴史教育実践としての加藤実践の射程をさぐる―

第U部 加藤実践の教育学

第6章 加藤実践の基本的特質と評価枠組(佐貫浩)  
 ―仮説設定と討論学習、価値と科学的認識、価値の自由をめぐって―

第7章 教育方法学からみた加藤実践(臼井嘉一)

第8章 歴史学習における主体性と加藤実践(外山英昭)  
 ―社会科学習づくりの課題と方法―

第9章 加藤実践における主体形成(青木孝太)  
 ―ミシェル・フーコーを手掛かりに―

第V部 教育実践の現場と加藤実践

第10章 中学校教師からみた加藤実践(小林朗)

第11章 学ぶ意欲を引き出し、学ぶ意味を実感させる討論授業(楳澤和夫)
  ―体験的討論授業論―

第12章 加藤実践の世界史像(三橋広夫) 
  ─高校生の歴史認識と「国家の論理」―

第13章 加藤実践を追試する(若杉温) 
  ―応用可能な視点と方法―

第W部 加藤公明のライフストーリー

第14章 歴史教育の諸課題と千葉県の歴史教育活動について(加藤公明)
 ―教師のライフヒストリーを通して―

第15章 わくわく探訪「加藤実践の生まれる現場」(荒沢千賀子)
  ―「頑固な問い」から訪ねる教育実践:

  授業ノートとインタビューを手がかりに―

第V部 加藤実践の現在

第16章 歴史を熱く語り合う高校生(加藤公明) 
 ―徳政一揆の農民たちは有罪か―

第17章 加藤実践を受け継ぐ

第1節 加藤実践を参観して考えたこと(渡辺哲郎) 

第2節 加藤実践では生徒の歴史認識をどこまで指導するのか(松井延安)
 ―「全体(本質)認識」の評価をめぐって―

第3節 加藤実践にみる「過程」としての民主主義(加藤美緒) 

あとがき(加藤公明)
 
本書「序論」より

加藤公明「考える日本史」授業とは
 高校日本史の討論授業、「考える日本史」授業で知られる加藤公明実践について、多角的な視点から徹底的に議論し、歴史教育実践としての魅力や価値を明らかにすること。これが本書の課題である。
わたしたちは、この本を、これから歴史教育者をめざす人たち、生徒を熱中させ、学びがいのある歴史の授業をつくりたいと願っている現場教員の人たち、歴史を学び、教えるとはいかなる営みなのかを根本からとらえ返したいと考える人たちに読んでもらい、内容を検討していただき、戦後歴史教育・社会科教育の新しい地平をともに拓いていきたいと思っている。……
加藤実践の魅力と価値は何か
 本書の分析対象である加藤実践の魅力や価値は何か。これらは本書全体で追求されることがらであるが、ここでは、さしあたり3つのことを指摘したい。
 1つは、過去の歴史的経験に立ち返り、現在をとらえ返す歴史学的思考の有効性や実践性をわたしたちに教えてくれることである。別の言い方をすれば、歴史学・歴史教育とは何かということを根元的に考える確実な手がかりが加藤実践にはあるということである。……
 2つは、教育とは何か、その本来的な価値を見いだすことができる点である。
 加藤の実践記録を読むと、生徒が実に自由に発言し、真剣に討論し、歴史を楽しく学んでいる姿に出会うことができる。このような姿は、残念ながら、なかなか現在の日本の学校教育ではみることができない。それだけに、わたしたちは加藤実践のなかの生徒に出会うと、驚きとともに新鮮さを覚えずにはいられない。……
 3つは、生徒に自由な発言を許しながらも討論を組織することで、生徒を歴史認識の主体として成長、発達させる歴史教育者としての指導性・専門性であり、その基礎にある加藤公明自身の人間的魅力である。……
加藤実践の共有化に向けて
 ……自らの実践に寄せられる疑問や意見に対して、加藤は実践記録を通じて応答してきた。「考える日本史」授業について自らの手で理論化、体系化、意味づけも行なってもきた。独自の歴史教育の系統性への見通しも提出している。生徒の主体的な歴史認識を育てるとは何かについては、論理性、実証性、個性という3つの観点から生徒の歴史認識を批評し、それを豊富化させることだとの回答も用意した。
 だが、やはり自らの実践を自らだけで分析考察すること、客観化、理論化するには限界があったのではないか。実践記録の意味や射程は、他者が批評することによってはじめて解明される側面があり、ここに歴史教育実践の批評の学としての歴史教育学の意義や役割があるだろう。本書では、加藤実践に対して寄せられる疑問や批判に対して、実践の当事者である加藤とともに加藤実践を批評する各執筆者が応答責任を果たすことで、後続の歴史教育者が加藤実践の経験や方法に学ぶことができるようにすること、いうなれば、加藤実践を戦後歴史教育の「共有財産」にしていくことを課題としている。

加藤実践を批評するための3つの視点
 そのために、本書全体を通じて加藤実践を批評するうえで3つの視点を設定した。
 1つは、戦後の歴史学・歴史教育の歴史的展開のなかで加藤実践を位置づけ、その意味を明らかにすることである。加藤実践は歴史学の学問的蓄積に主体的に学びつつ、先行する歴史教育実践を継承的批判するなかで創造されてきたからこそ、学説史的な関心と視点が必要になる。……
 2つは、加藤実践を千葉県歴史教育者協議会日本史部会というサークルのなかで生成・発展し、さらには他の実践に影響をあたえたものとしてとらえる視点である。……
 3つは、既存の社会科教育学とは異なる、斬新な視点での解釈と新資料の発掘による実践の読み直しである。……
 本書のように、一つの教育実践をとりあげて、それを多様な執筆者陣で多角的に分析した歴史教育研究書はこれまでになかったのではないか。もちろん残された課題は多いが、本書は歴史教育実践分析・研究の新しい境地を拓く試みであり、この点でのささやかな自負がわたしたちにはある。……
 なお、今回、入手が困難となっていた『わくわく論争! 考える日本史授業』と『考える日本史授業2』のPDFファイルおよび「徳政一揆」をとりあげた加藤の討論授業を記録した映像を収録したDVDを付した。本体とあわせてご活用いただきたい。(和田 悠)


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